こんちには。YoFuです。
今回は『旅が楽しくなる知識 世界各地のイスラム教の建築の主な特徴を解説』をお送りします。
イスラム建築は世界中に存在しています。おそらく、どこの国にいってもイスラム建築と1つは出会うんじゃないでしょうか。それぐらいイスラム建築はたくさんあります。
イスラム建築の魅力は、国ごとで全く違う表情を持っていることです。国ごとに特徴が違います。
イスラム建築のことを少しでも知っていれば旅はより楽しくなるんじゃないでしょうか。
そんなわけでイスラム建築について解説していきます。
追記:2020年1月9日大幅加筆修正、画像を追加して見やすくしました
まえがき
イスラム教の建築をイスラム建築と言います。
イスラム建築とはモスクだけのことではありません。イスラム教徒のための建築すべてをイスラム建築と呼びます。
有名なイスラムの建築物はモスクが多いので、イスラム建築=モスクのイメージができてしまいますが、住宅や店、宿、宮殿、砦、墓などイスラム教徒のために建てられたものはすべて、イスラム建築です。
御存知の通り、イスラム世界は世界中に広がっています。現在では、イスラム教徒は世界の人口の1/3ほどもいるほどの広がりです。
イスラム教は7世紀に誕生し、中東、地中海、オリエント、アフリカ、インド、東アジアなど世界中に広まりました。
世界中に広がったイスラム建築は、各地の伝統的な建築や文化を吸収しました。
その結果、世界各地それぞれで独自の特徴を持つ多様なイスラム建築が誕生しました。根本は同じですが、世界各地それぞれで全く表情が違います。
各地で表情が違うイスラム建築は見ているだけでも面白いですが、知識を深めればもっと多くの表情が見れ、より面白くなるでしょう。
今回は、イスラム建築の基本、地域ごとの特徴、イスラム建築の主な特徴を解説します。
イスラム建築の基本
イスラム建築が最も重視しているのは、空間です。空間を最も大切にしている建築です。
例えばモスクですが、これはイスラム教徒が集まって礼拝を行う空間です。
後で解説しますが、モスクには定形がありません。モスクはあくまでも礼拝をするための空間なので、どのような形でもいいのです。これは、イスラム建築が空間を重要とした建築だからです。
イスラム建築は空間を重要とする建築です。これを意識すれば、イスラム建築の見方が変わるでしょう。
これはモスクだけではなく、イスラム建築全てにいえることです。
世界各地のイスラム建築の特徴
先程述べた通り、イスラム建築は空間を最も重要としている建築です。
そのため、イスラム建築には定形がありません。必須の施設もありません。それがイスラム教徒のための建築であるならば、どのような形でもいいのです。
この特徴がイスラム建築に多様性をもたらしました。
定形も必須の施設もなかったので、イスラム教が広がった先の建築技術や文化をすんなりと吸収することが出来たからです。
そもそも、建築というものは各地の気候や風土に強い制限を受けるものです。その土地で手に入る材料を使って、その土地の気候や風土に合わせて建築するからです。
熱帯雨林では、木材を使用して雨に強い建築を。
砂漠では、土を使用して乾燥に強い建築を。
この気候と風土による制限によって誕生した建築技術や建築文化がその土地独自の文化や主教と融合し、各地に多様な建築が存在しています。
イスラム建築は、各地の多様な建築文化をそっくりそのまま吸収しました。異教であるはずの各地の宗教でさえもそっくりそのまま吸収しました。
そして、吸収した建築文化にイスラムのエッセンスを加え、新たなイスラム建築を生み出しました。
このようにして、イスラム建築は実に多くの多様性を獲得しました。広がれば広がるだけ、多様性を増していきました。
そのため、世界中のイスラム建築で共通の特徴は殆どありません。後で解説するイスラム教の主な特徴を1つも持っていないイスラム建築も存在しています。
唯一の共通点は、空間を重要とすることぐらいでしょう。
ですが、根本は同じです。表情が違うだけです。
イスラム建築は、空間を重要としつつ実に多くの多様性を持っているということを意識すれば、もっといろんな表情を見せてくれるようになるでしょう。
ついさっき、建築は気候や風土で強い制限を受けると述べました。そのため、似たような気候や風土を持つ場所では、似たような建築になることがあります。
そのため、ざっくりと各地域ごとの主な特徴をまとめました。
ちなみ、イスラム建築が定形を持っていない理由は分かっていません。が、イスラム教を生み出したアラブ人が遊牧民であったので、独自の建築技術を持っていなかったから。という説があります。
オリエント世界
イスラムの中心地であったペルシアがある地域です。
イスラムの中心地だったので、必然的にイスラム建築の中心地にもなりました。後で解説するイスラム建築の特徴の多くはここで誕生し、各地へ広がっていきました。
主に煉瓦造りです。比較的軽いので、構造を自由に設定することができます。ドームやアーチなどのさまざまな曲面が建築に取り入れられました。
また、様々な装飾技法が誕生しました。建物の表面に漆喰を塗って浮き彫りを施したり、仕上げに施釉タイルを使って建物を色で溢れさせたり。
地中海世界
かつてはローマ帝国の支配地域だったので、ローマ建築をベースとした建築様式になりました。
主に石造りです。
ローマ建築がベースなので、柱の分節やモザイク装飾、ペンデンティブ・ドームなどのキリスト教的建築要素が用いられています。それにオリエント世界のイスラム建築が融合し、独特の様式を作り上げました。
インド世界
インドにイスラム国家が初めて誕生したのは10世紀ころです。その頃にはすでに、独自の文明が発達しており、もちろん独自の文化を持っていました。宗教については、仏教やヒンドゥー教が広く浸透していました。
そのため、インド世界のイスラム建築はインド各地の独自の文化・宗教的要素が強く影響しています。
主に石造りです。外観に色があまり用いられず、素材の色がそのまま外観の色となっている建物が多くあります。
ちなみに、宗教建築が彫刻で溢れているのは、イスラムの影響ではなくインド独自の文化です。
東南アジア
東南アジアにイスラム教が本格的に伝わったのは15世紀ころです。その頃にはすでに、独自の文明が発達しており、もちろん独自の文化を持っていました。宗教については、地域ごとの土着の宗教を信仰していました。
なので、東南アジアのイスラム建築は各地の独自の文化・土着の宗教的要素がかなり強く影響しています。イスラムが影響を受けたというより、イスラムに影響を受けたと言ったほうが妥当かもしれません。
主に木造です。
イスラム建築の特徴
モスク
イスラム教徒が神に礼拝するための空間です。
礼拝のためだけでなく、裁判所や学校、集会所、地域交流などの市民が集まるための施設としても使われます。
イスラム建築には定型や必須の施設がないので、各地域ごとの文化に基づいた多様なモスクが作られました。世界のモスクで共通点はほとんどありません。
モスクは大小の2種類あります。大きいものは、大モスクまたは金曜モスクと呼ばれるものです。金曜正午に集団礼拝を行うための大規模なモスクです。ミンバルが設けられて説教が行われます。
小さいものは小モスクです。日常生活の身近にある、日常性の高い小さなモスクです。日常生活を送る中での儀式、婚礼や葬送などを執り行います。住宅街や市場の一角に設けられたりします。
空間
イスラム教では礼拝が重要です。神に礼拝をする空間そのものを神聖とみなしました。
そのため、いかにして空間そのものに神聖をもたせるかがモスクの命題でした。
神聖をもたせるために重視したのは空間の調和です。
なだらかに膨らむ曲面、林立する細い柱、韻律のある中庭、優雅さと装飾、光のもたらす効果などの建築技術で空間を調和させ、空間に神聖をもたせました。
ギブラ
・メッカへの礼拝軸ギブラとミフラーブが設けられたギブラ壁
メッカへの礼拝軸。礼拝を行う方向のことです。
ギブラ壁
メッカの方向を簡単に向けるように、メッカに対面するように設けられた壁。キブラ壁に対面して座ることで、メッカの方向を簡単に向くことができるようになっています。
メッカへの礼拝軸であるギブラに直角になっています。
ミフラーブが設けられます。
ミフラーブ
メッカの方向を指し示す装置です。
宮殿やマドラサ、墓建築、住宅など、モスク以外の建築でもミフラーブを持っていることがほとんどです。お祈り用の絨毯にもミフラーブが付いていることがあります。
モスクの場合、礼拝室の最奥の壁に取り付けられていることが多いです。多くはアーチ型の壁のくぼみのようなもので、壮麗な装飾が施されています。
巨大な建物だと、ミフラーブを複数持っていることがあります。
ミンバル
・ミフラーブの真横に設けられたミンバル。
ミフラーブのそばに設けられた説教壇。人が多く集まる金曜モスクに設置されていることが多いです。
マクスーラ
・チュニジア、カイルアンの大モスクのマクスーラ。
・トルコ、アヤソフィアのマクスーラ。小屋のような形で設けられています。
モスクの中にある、特別に仕切られた空間です。貴賓席や女性席として使われます。比較的大きなモスクに設けられます。
中央ミフラーブの前に作られることが多いですが、2階に作られる場合もあります。
イーワーン
・装飾豊かで大きなイーワーンと複数の小さなイーワーン
三方が壁で囲まれ、残りの一方が開け放たれている矩形平面の空間です。縦に長い直方体をくり抜いた姿をしています。天井がかなり高いので、かなり開放的な空間です。
多くの場合、中庭に向けて開かれており、中庭と建物内部をつなぐ中間的な空間として使われています。
豊かな装飾が施されることが多く、鮮やかな色で彩色したり、ムカルナスを設けたりすることがあります。
モスクへの入り口の門として設置された場合はピシュタークと言います。
チャハール・イーワーン
・中庭に面したイーワーン。写真には3つしか写っていませんが、ちゃんともう一つあります。
矩形平面の中庭の4辺それぞれの中央にイーワーンを設置したものです。
墓
・世界で最も有名で最も豪華な墓の一つ、タージ・マハル。
死者のための記念碑です。ドームを象徴としたものが多いです。
初期はお墓だけの小規模で簡素なものでしたが、墓にお参りに来た人のための空間や儀式のための空間、礼拝所などの施設などが付け加えられていき、徐々に巨大な建築となっていきました。
全体に彫刻が施されたり、美しく彩色されたり、壮麗で巨大な建築になりました。内部も同じで、隅々まで装飾が施されています。内部は異空間のような幻想的な装飾が多いです。
タージマハルを始めとして、有名な建築は墓であることが多いです。
墓塔
墓に設けられた、埋葬した遺体を覆うための建築です。名前の通り、塔です。
ミナレットとは機能が異なり、外観をアピールするためのものです。機能的な使い方はされないので、内部は空洞で階段が設けられておらず登れないようになっていることが多いです。
ドーム
・ドーム
イスラム教では、ドームが非常に好まれました。モスクから住居まで、さまざまな建築で用いられました。
ドームには、神の座や天国などの多様な宗教的な意味付けをされました。外観的に、平屋根より強い印象を与えることができ、内側からは空間的な広がりを感じることができます。その他にも多用な印象を見るものに与えることができるので、あらゆる場所であらゆる用途で使用されました。
外観は、より大きく、より高く、より鮮やかに、より目立つように、見るものの視覚に訴えかける方向へと進化しました。巨大で華やかなドームは、都市のスカイラインに美しい膨らみとして浮かび、街中の視線を集めます。
内側は、人間を包み込むための空間として、見るものの内面に訴えかける方向へと進化しました。ドームより下の空間の大きさと、ドームの高さと広さがつり合うようにすることが重要でした。上手くつりあわせることができれば、天井のドームの曲面が、訪問者の頭上に伸びやかな空間を演出し、天井が無限に広がっているかのように感じさせることができます。
ドームはイスラム建築になくてはならないものとして進化しました。
ダブルドーム
・タージ・マハルはダブルドームです。外観からは天に昇るかのような高さですが、内側はそこまで高くありません。
ドームの上に別のドームを重ね、二重にしたものです。
ただのドームだと、外側の形=内側の形なので、外側を重視すれば内側が弱くなってしまい、内側を重視すれば外側が弱くなってしまうので、バランスが難しいものでした。
ドームを二重にする事で、外側と内側の形をそれぞれ自由に作ることができるので、それぞれが互いの形を気にせずに、役割をさらに強くすることができます。
ミナレット
・イスラム世界各地域の特色です。
1. イラク 2. モロッコ 3. トルコ 4. インド 5. エジプト 6. アジア
・トルコ、イスタンブールにあるスレイマニエ・モスクのミナレット。高さ70mに達するほどのミナレットがあります。
礼拝を呼びかけるアザーンが流される塔です。
ただの装飾的な役割である墓塔とは違い、機能的な役割を持たせられています。なので、階段が取り付けられており、登ることができます。
ドームが巨大になる前は、ミナレットがモスクのシンボルでした。ドームが巨大になるにつれて、シンボルの立場をドームに取られ、ドームを装飾するための要素となっていきました。
大ドームを目立たせるための役割だと、タージ・マハルのように矩形平面の四隅に設置されることが多いです。
螺旋型、角形など、地域によって特色があります。
ドゥ・ミナール
・ピシュタークの両脇に立つドゥ・ミナール
ピシュターク(高い門)の両脇に立つ2本のミナレットです。2本で一組です。
建物全体を装飾するためのただの要素で、装飾的な役割しかありません。機能的な役割はありません。
アーチ
・基本の形以外の、多様な形のアーチ
アーチは、単に横方向に真っ直ぐにするよりも、構造的に強くなります。さらに、見た目にも美しいです。この構造的合理性と装飾的美しさのために、イスラム建築では多用されました。
ミフラーブにはほぼ必須と言ってもいいほど、ミフラーブとセットで設けられたので、イスラム世界全域へ広がっています。
形も様々で、3心、4心、馬蹄型、三つ葉型、オジー・アーチなど、シンプルな形から華やかな形まで多用です。
天井でアーチを格子状に交差させたものをアーキネットと言います。
ムカルナス
・イーワーンに設けられたムカルナス
鍾乳石状または蜂の巣状に小さな曲面を集合させて、全体として凹曲面を作り出す装飾。
無作為な造形ではなく、何種類かの部品を規則的に反復して作り上げたものです。
完全に同じ部品を反復するのではなく、少しずつ違うものを反復することによって、反復が生み出す無機質の中にゆらぎを作り出しています。
このゆらぎが、対象性と幾何学性が支配する規則的で無機質なイスラム建築を、ただの建築以上の魅力的なものにしています。
幾何学性
イスラム建築は幾何学模様と同様に直線と曲線、定規とコンパスを使って設計、建てられています。
アーチやドームなどの曲面、ムカルナスや星型模様などの装飾技法の場合、複雑そうにみえますが、あくまでも幾何学模様です。
アーチやドームはいくつかの円弧を、星型はいくつかの多角形を組み合わせて構築されています。
ムカルナスは幾何学模様の粋を集めたもので、いくつもの形が組み合わされたものです。イスラム建築の持つ幾何学性の象徴です。
対称性
イスラム建築を支配している要素です。イスラム建築の陰の支配者です。イスラム建築は対称性に囚われていることが多いです。
対称性を持たせることで、建築の外観を美しく見せることができます。
しかし、一見対称のようでも、敷地の制限により実際は非対称だったりすることが多いです。その場合、非対称ということを気づかれないようにするため、建物を分割して対称的に見せる技法が用いられています。
複合建築や都市計画などの大きな建築の場合、対称性よりも機能性が優先されます。
色
・カーバ神殿の黒色の聖なる石
・メディナにあるムハンマドのお墓にかかる緑色のドーム
イスラム建築は色彩に満ちた建築です。建築の内外にはさまざまな色が溢れています。
イスラム建築の建設者の、色や光に対する優れた感覚がイスラム建築を色彩で溢れさせました。
イスラム教では、色自体に意味を持っています。
黒、白、緑は聖なる色です。
カーバ神殿を覆う垂れ幕やカーバ神殿の隅の聖なる石は黒色です。
カーバ神殿に巡礼する際の巡礼着は純白です。
ムハンマドの墓にかかるドーム、豊穣を意味する植物は緑色です。
青は天国と深い関係を持つ色で、天国を意味する空は水色と藍色です。
この他にも多用な色で鮮やかに彩色されています。
光
建築の持つ効果を引き立てるために、建築素材の一つとして考えられ、使用されました。
開口部の大きさ、数、高さを調整して内部に差し込む光を操りました。
光が差し込む箇所の彫刻の深さや配置で陰の濃さを調節して室内の陰影を操り、開口部に枠を設けて光を模様として描写したり、光の輝きやきらめきで空間を包んだりしました。
光がもたらす効果によって神聖を表現しました。空間に神聖を持たせました。
庭園
・タージ・マハルの平面図。真ん中が庭園です。水路で4つの正方形に分割されています。
楽園の語源です。
イスラム教徒の住む乾燥地帯は、緑が乏しく、水を手に入れることが難しい過酷な自然環境です。乏しい緑と手に入れることが難しい水、それらを与えてくれる豊穣な空間こそが、イスラムにとっての天国の様相でした。
そんな天国の様相を表現したものが庭園です。この庭園思想がイスラムの根幹の一つとなっています。
イスラム建築に設けられた庭園は庭園思想を忠実に反映しているので、豊穣の緑や満ち溢れた水に囲まれた空間となり、住宅から大モスクまで多くのイスラム建築で盛んに作られました。また、工芸品や建物の建築にも庭園が描かれました。
広場も庭の一種です。
矩形平面の周りを壁で囲み、その中を中心で直交する水路でさらに小さな4つの矩形に分割する様式が有名です。チャハルバーグ(四分庭園)と言います。
これまたタージ・マハルが有名です。
装飾
イスラム教では、この世の万物はすべて神の創造物であり、何かを具象することは神の創造物を模倣し、神と競うことであるという考え方があります。
なので、装飾のモチーフも何かを具象したものではなく、抽象化した模様がメインとなりました。
宗教施設では特にその傾向が強いです。文字模様や幾何学模様、植物模様などが好まれ、具象的なモチーフはほとんど用いられていません。
一方、世俗建築ではそこまで徹底されることはなく、権力者の人物画や景色などの具象的なモチーフが用いられることがありました。
装飾技法
浮き彫り、打ち抜き、象嵌、モザイク、彩色など様々な装飾技法で建築を彩りました。
浮き彫りは、平な面を彫って凹凸をつけ、浮き上がって見えるようにする技法です。
打ち抜きは、浮き彫りをさらに深く掘って貫通させる技法です。貫通させた部分に開口部としての役割をもたせることがあります。
象嵌は、金属や木材などに模様を彫り、そこに他の材料をはめ込む技法です。
モザイクは、タイルなどの小片を組み合わせて埋め込み、模様を作り出す技法です。
象嵌とモザイクは似ています。象嵌は細かい模様を作ることができるので、工芸品に用いられることが多いです。モザイクは巨大な絵を描くことができるので、壁画などに用いられます。
タイル
ガラス質の釉薬を塗ってから焼成したレンガです。
表面にガラス質の釉薬を塗ることで耐久性を高めることができます。釉薬に色をもたせることで、色彩も加えることができます。
釉薬で絵を描いてから焼成したタイルを絵つけタイルと呼びます。
色んな色の色タイルをカットして、それを組み合わせて描いた模様をモザイクタイルと呼びます。
サラート
礼拝のことです。建築要素ではないですが、建築を規定するものです。
特に、モスクは礼拝のための空間なので、礼拝によって規定されます。
礼拝には厳格なルールが存在します。
例えば、礼拝前に身を清めなければならないとされています。そのため、モスクには身を清めるための施設ミーダァが必ず併設されます。
ちなみに、ミーダァのそばには公衆トイレが設置されてる場合が多いので、もよおしたらモスクに行きましょう。
マドラサ
イスラム学を中心に、様々な学問を教える総合的な教育機関です。イスラム以外のあらゆる学問を教えています。
バザール
・イラン、サナンダジュのバザール。ドーム屋根に覆われています。
さまざまな店や工房が立ち並ぶ市場空間です。ドームや屋根で覆われていることがあります。
イスラム教では商行為が推奨されていたため、イスラム世界の各地にバザールが整備されています。各地で地方色豊かです。
店か工房かで大まかに区分けされ、さらにそこから店は商品の種類、工房は製造工程の違いによって細かく区画分けされています。
店は大通りにならび、工房は裏通りにならびます。
アラビア語圏では、スークとも言います。
宮殿や城
権力者や為政者が生活する空間です。地域の特色や時代の流行に合わせて建てられるため、地域と時代で多種多様です。
行政のための執務空間と生活する私的空間を併せ持つのが一般的です。なので、かなり広い空間を必要とします。
ヨーロッパでは、空間を上に拡張し、華やかな外観を持つものが多いです。
イスラムの場合は、空間を平面的に拡張し、外観は簡素で、内部を華やかにする傾向があります。
敷地は壁で囲われているので、外からは簡素な面しか見ることができません。内部には、簡素な外観からは想像できないほど美しい装飾と、豊かな庭園による優雅な空間が広がっています。
リバート
・チュニジアにあるリバート
聖戦のための砦です。実用建築なので、装飾はほとんどなく、華やかさのかけらもありません。
地形に従った複雑な形を持っています。
礼拝所が設けられています。
男女の扱いの違い
イスラム教では、男性と女性の扱いの違いを厳密に定めています。それが建築にも反映されており、独特の特徴が生み出されています。
住宅では外から覗かれないような仕組みを設けていたり、モスクでは男性と女性のスペースが区切られていたりします。
イスラムの主な建築
・タージ・マハル
インドにある、有名な墓です。インド・イスラーム文化の最高傑作の一つです。
すべて大理石でできている白亜の美しい建築です。
・エスファハーンのマスジェデ・ジャーメ
イランのエスファハーンにある金曜モスクです。771年に建設され、絶え間なく増改築されてきました。そのため、歴代の建築様式が詰まっています。
マスジェデ・ジャーメとは金曜モスクのことで、固有の名前ではなく一般的な名前です。エスファハーンのマスジェデ・ジャーメとは、エスファハーンにある金曜モスクという意味です。
・ダマスクスのマスジェデ・ジャーメ
シリアのダマスクスにある金曜モスクです。世界最古のモスクの一つです。ウマイヤ朝によって建てられたため、ウマイヤ・モスクとも呼ばれます。
ダマスクスにある金曜モスクという意味です。
・スレイマニエ・モスク
トルコのイスタンブールにある、オスマントルコ建築の最高傑作の一つです。オスマン帝国の皇帝スレイマンによって建てられたため、スレイマニエ・モスクと呼ばれています。
あとがき
イスラム建築は本当に多種多様です。各地域ごとに多様で、同じ地域でも時代が違えば別の建築です。本当に多種多様です。
ここで解説しきれなかったことがまだまだたくさんあります。
イスラム建築は、各地の文化が凝縮された、多様性を楽しむ建築です。
ぜひ、自分の目でみて各地の文化の多様性を感じて楽しんでください。
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