YoFu’s Taravel Blog

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絵画で見るキリスト教の美術・新約聖書編 旅を楽しくする知識

こんにちは。YoFuです。

今回は『旅を楽しくする知識 絵画で見るキリスト教の美術・新約聖書編』をお送りします。

『最期の晩餐』『最後の審判』

皆さんも聞いたことがある絵画の名前だと思います。

これらは聖書のストーリーをモチーフにして描かれています。

これらだけでなく、有名な絵画、キリスト教会のステンドグラス、彫刻などの西洋美術は聖書をモチーフにして描かれていることが多いです。なので、聖書を理解すれば、それらの西洋美術、特に宗教画・キリスト教美術をもっともっと楽しむことができます。

聖書は『新約聖書』と『旧約聖書』の二つが存在し、それぞれが重厚なストーリーを展開しています。2つを一度に解説するととても長くなってしまうので、今回は『新約聖書』のストーリーを実際の絵画を交えながら簡単に解説していきます。

旧約聖書編はこちらです。

yofu.hatenablog.com

 

キリスト教美術の目的

キリスト教美術が誕生した理由は、聖書を読めない人に聖書を理解してもらうためです。

昔は識字率が低かったので、ほとんどの人は聖書を読むことすらできませんでした。聖書を読むことができるのはごく一部の聖職者や学者などに限られていました。

そんな人達に聖書を理解してもらうために、キリスト教美術は誕生しました。

聖書の場面を描いた絵画などは、見るだけで聖書のストーリーを理解できました。

加えて、聖職者が聖書を読んで解説することで、聖書の理解を深めてもらう。これで、聖書を読むことができない人に聖書を理解してもらっていました。

聖書が読めなくても、見るだけで聖書を理解できるキリスト教美術は、キリスト教の布教で重宝されました。布教の拡大とともにキリスト教美術は世界中でひろまり、名作と呼ばれるものから素朴なものまでたくさんのものが世界中で作られました。

キリスト教美術は見るだけで理解できるようになっているので、知識がなくとも楽しむことができるようになっています。

それだけでも十分に楽しいのですが、もっと深く楽しむ方法があります。

それは、聖書のストーリーを理解することです。

聖書のストーリーを理解すれば、絵画を感覚的なものだけでなく、論理的なものでも理解できるようになります。

聖書のストーリーを理解できる手助けができるように、聖書のストーリーを実際の美術を並べながら簡単に分かりやすく解説していきます。

新約聖書

アブラハムからの家系図から始まり、イエスがダヴィデの直系の子孫であることを説明している。

ヨアキムとアンナ 黄金門での出会い

イエスの祖父母ヨアキムとアンナ。

2人には子どもがいなかったので、ヨアキムは荒野で、アンナは家で子どもが授かるように祈った。

2人のもとに天使が訪れ、精霊によって子どもが授かると告げられた。

ヨアキムが家に戻ると、アンナは神殿の黄金門のところで待っていた。2人は子どもを授かったことに感謝しつつ抱き合った。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『金門の出会い』f:id:YoFu:20200907161836j:plain

1305パドヴァ,スクロヴェーニ礼拝堂

マリアの神殿奉献

マリアはヨアキムの邸宅で誕生した。

アンナは子どもを授かるように祈っていたとき、生まれた子は神に使えさせると約束していたので、マリアが3歳になったときに神殿に奉献された。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『マリアの神殿奉献』

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パドヴァ,スクロヴェーニ礼拝堂

マリアの結婚 受胎告知

マリアが12歳になったとき、マリアと結婚を望むものたちが杖を持って神殿に集まってきた。集まってきたうちの1人、ヨセフの杖に奇跡が起こり、花が咲いた。マリアはヨセフと婚約する。

マリアのもとに天使ガブリエルが現れ、神の子を懐妊するというお告げを受ける。処女だったマリアは戸惑うが、運命を受け入れて処女のまま受胎した。

後にヨセフと結婚する。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『マリアの婿選び』

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パドヴァ,スクロヴェーニ礼拝堂

 

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『受胎告知』

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1655-1660サンクトペテルブルク,エルミタージュ美術館

キリストの降誕

マリアは夫ヨセフの出身地ベツヘレム滞在中に産気づいた。宿屋が満員だったため、宿屋の家畜小屋でマリアは男の子を出産した。

8日後、男の子は割礼を受けて、受胎告知の際に告げられていた名前イエスと名付けられる。

 

サンドロ・ボッティチェッリ『キリストの降誕』

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1500ロンドン国立美術館

東方三博士の礼拝

救世主の誕生を知った3人の占星術の博士がイエスのもとを訪れ、祝福を行った。3人は捧げものとして黄金、乳香、没薬を贈った。

黄金はイエスの王権への敬意、乳香はイエスの神聖への敬意、没薬はイエスの死の予兆を象徴している。

 

ハインリヒ・フェルディナント・ホフマン『東方三博士の礼拝』

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ヘロデ王の幼児虐殺

自分を脅かす存在になるであろう、将来のユダヤ人の王の誕生を知ったヘロデ王はベツヘレム周辺にいる2歳以下の男の子全員を殺させた。

 

ピーテル・パウル・ルーベンス『幼児虐殺』

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1611-1612トロント,アートギャラリー・オブ・オンタリオ

エジプトへの逃避

イエスたちは天使の導きによって、ヘロデ王が幼児虐殺を行う前にエジプトへ向けてベツへレムを脱出していた。

 

ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ『エジプトへの逃避』

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1423フィレンツェ,ウッフィーツィ美術館

ヘロデ王の死とイスラエルへの帰還

イエスたちはヘロデ王が死んだことを天使から告げられ、エルサレムへと戻る。

しかし、ヘロデ王の息子がエルサレムを支配していたため、エルサレムから離れた街ガリラヤ地方ナザレで暮らし始めた。

キリストの洗礼

マリアの従姉妹エリザベトも精霊によって受胎した。

エリザベトの子はヨハネと名付けられ、イエスよりも半年ほど先に生まれていた。

ヨハネは荒野で修行をしながら、ヨルダン川で人々に洗礼を行っていた。

イエスはヨルダン川でヨハネから洗礼を受けた。

 

アンドレア・デル・ヴェロッキオ『キリストの洗礼』

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1472-1475フィレンツェ,ウッフィーツィ美術館

キリストの試練 悪魔の誘惑

イエスは洗礼を受けた後、荒野に入って40日間の修行を始めた。修行の途中で3度、悪魔の誘惑を受けるが全てを跳ね除けて無事に修行を終える。

 

ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ『山上の誘惑』

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1308-1311ニューヨーク,フリック・コレクション

布教の開始

イエスは故郷ガリラヤ地方に戻り、布教活動を始めた。

12人の弟子を選び、家、財産、自分の命など全てを捨てさせて身一つで布教活動をさせた。

布教に訪れる先々で奇跡を起こし、重税と貧困にあえぐ民を中心に信者を増やしていった。

キリストの変容

イエスが3人の使徒ペトロ、ヨハネ、ヤコブと山に登った。

祈っているイエスの体が白く輝き始め、旧約聖書の預言者モーセとエリヤが現れた。イエスは2人と語り合う。

 

ラファエロ・サンティ『キリストの変容』

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1516-1520ヴァチカン美術館

エルサレム入城

イエスが弟子たちを率いてロバの背に乗りながらエルサレムに入城する。人々はなつめやしを携えながら、エルサレムの城門の前でイエスを歓迎した。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『キリストのエルサレム入城』

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1304-1306パドヴァ,スクロヴェーニ礼拝堂

神殿から商人を追い払うキリスト

エルサレムの神殿に入ったとき、境内で商売人が屋台を開いていた。それを見つけたイエスは祈りの家を強盗の巣にしたと激怒し、商売人たちを追い払う。

イエスの様子に群衆は惹きつけられる一方、この出来事がきっかけになり、ユダヤの長老たちに危険視されて狙われることになってしまう。

 

ヤーコブ・ヨルダーンス『神殿から商人を追い払うイエス』

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1645-1650パリ,ルーブル美術館

ユダの裏切り

弟子の1人であるユダの中に悪魔が入った。

ユダヤの長老たちにイエスの引き渡しを持ちかけ、報酬として銀貨30枚をもらう約束を取り付ける。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『ユダの裏切り』

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1304-1306パドヴァ,スクロヴェーニ礼拝堂

最後の晩餐

イエスは晩餐の場で、弟子たちの中に裏切り者がいること、自分が捕まったときに弟子たちが自分を見捨てて逃げてしまうことを告げる。

自らの体と血として、パンとぶどう酒を与える。

ユダが自分を裏切ることを予告し、ユダに向かって今すぐにしようとしていることをしなさいと告げる。ユダはそれを聞いてすぐに出ていった。

 

ティントレット『最後の晩餐』

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1592-1594ヴェネツィア,サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂

オリーブ山での祈り

晩餐の後、イエスは3人の弟子ペテロ、ヨハネ、ヤコブを引き連れてオリーブ山の麓ゲツセマネに向かい、神への祈りを捧げた。

一心に祈るイエスとは対象的に、弟子たちは地面に倒れるように眠りこけていた。

 

アンドレア・マンテーニャ『園での苦悩』

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1458-1460ロンドン国立美術館

キリストの逮捕

ユダがローマ兵を連れて現れた。ユダがローマ兵への合図としてイエスへ接吻した。

イエスはローマ兵に捕まってしまうが、抵抗せずにユダに向かって話しかけただけだった。

弟子たちは群衆に紛れるように逃げ出した。

 

フラ・アンジェリコ『イエスの捕縛』

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1437-1446フィレンツェ,サン・マルコ国立美術館

キリストの嘲笑

捉えられたイエスは大司祭カヤパの前で尋問を受けた。

イエスは手を縛られ、目隠しをされ、民衆や兵士から嘲笑や罵倒、つばを吐きかけられた。

 

マティアス・グリューネヴァルト『キリストの嘲笑』

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1503-1505ミュンヘン,アルテ・ピナコテーク

ピラトの前のキリスト

総督ピラトはイエスの処遇をユダヤの民衆の意思に委ねた。ユダヤの民衆はイエスの死刑を望んだため、ピラトはイエスの死刑を決定した。

 

ムンカーチ・ミハーイ『ピラトの前のキリスト』

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1881ハンガリー国立美術館

キリストの鞭打ち

イエスはローマ兵の手に引き渡された。

鞭を打たれ、茨の冠を頭にかぶらされ、緋色の服を着せられ、葦の棒をもたせられた。

磔刑

十字架刑は当時もっとも重い刑罰だった。即死せず、磔にされてから長い間苦しんだ。

イエスは自分が架けられる十字架を自ら運ばされた。運ぶ途中で何度か倒れ、衣服を剥ぎ取られる。

弟子のほとんどは逃げてしまい、イエスの処刑を見守った弟子は聖母マリアやマグダラのマリア、サロメ、聖ヨハネなどの少ない弟子だけだった。

 

ラファエロ・サンティ『シチリアの苦悶』

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1516マドリード,プラド美術館

 

アンドレア・マンテーニャ『磔刑図』

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1457-1460パリ,ルーブル美術館

十字架降架

アリマタヤのヨセフがイエスの死体を受け取り、亜麻布で死体を包み、墓に埋葬した。その様子を見守った弟子もほとんどいなかった。

 

ピーテル・パウル・ルーベンス『十字架降架』

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1611-1614アントウェルペン,聖母大聖堂

 

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ

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1603-1604ヴァチカン美術館

キリストの地獄への降下

イエスは磔刑で死んでから復活するまでの3日間、洗礼を受けていない善良な魂が閉じ込められている辺獄から、善良な魂を天国へと導いた。

辺獄にはアダムとイブやノアなどの人物の魂が閉じ込められている。

 

アーニョロ・ブロンズィーノ『キリストの辺獄降下』

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1552フィレンツェ,サンタ・クローチェ聖堂付属美術館

キリストの復活

イエスの死から3日後、弟子がイエスの墓を訪れると、イエスの死体が亡くなり、死体を包んでいた亜麻布だけが残されていることに気づく。

墓の中には天使がおり、イエスが復活したことを告げる。

死体が亡くなったことで嘆くマグダラのマリアのもとに復活したイエスが現れる。近づこうとするマリアに近寄ってはいけないと制止し、話をする。

その後、イエスは次々と弟子の前に現れて話をした。

 

ラファエロ・サンティ『キリストの復活』

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1499-1502サンパウロ美術館

キリストの昇天

イエスは復活から40日後、オリーブ山の山頂で弟子たちのもとに姿を表したのを最後に、天に登った。

 

ジョン・シングルトン・コプリー『昇天』

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1775ボストン美術館

聖霊降臨

イエスが昇天する前、弟子たちに近いうちに精霊が降臨すると告げていた。

イエスの昇天から10日後、集まっていた120人の信徒もとに精霊が降りてきてバプテスマを授けた。

 

エル・グレコ『聖霊降臨』

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1600マドリード,プラド美術館

最後の審判

7つの角と7つの目を持った子羊が現れ、7つの封印を解く。

7つ目の封印が解けると、7人の天使が現れそれぞれがラッパを吹く。

7人目の天使がラッパを吹くと、イエスが再臨し、人類の天国行きと地獄行きを分ける最後の審判が下される。

天国に行ける人は予め決まっていて、いのちの書に名前が記載されている。悪魔と人類が滅び去った後、新しいエルサレム王国が降りてくる。 

 

ハンス・メムリンク『最期の審判』

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1466-1473グダニスク国立博物館

 

聖書の登場人物

洗礼者ヨハネ

聖母マリアのいとこエリザベツの息子。イエスに洗礼を施した人物。

荒野で修行・説教・洗礼を行いながら生活していた。パレスチナの領主ヘロデの娘サロメによって処刑される。

十二使徒

福音書記者ルカによって定義された12人の弟子。

 

アンドレア・デル・カスターニョ『最後の晩餐』

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1445−1450フィレンツェ,聖アポロニア教会

左から6番目、泥酔して寝ている弟子の左がイエス。

イエス左、机の手前側にいるのがユダ。

12人の使徒の左から順に、

1.小ヤコブ (アルパヨの子)

2.ピリポ

3.トマス

使徒の中でただ一人、イエスの復活を信じなかった。

4.大ヤコブ(ゼベダイの子)

5.ペテロ

イエス連行の際に他人のふりをしてごまかした。

6.ユダ(イスカリオテのユダ)

イエスを裏切り、司祭に引き渡した。

7.ヨハネ(ゼベダイの子)

福音書記者の一人。

8.アンデレ

もとは洗礼者ヨハネの弟子。

9.バルトロマイ

10.タダイ

11.シモン(熱心党のシモン)

12.マタイ

福音書記者の一人。

聖マタイ

福音書記者・十二使徒の一人。

徴税の仕事をしていたマタイをイエスが直々に選び、使徒となった。

福音を書いているときは天使がそばにいる。

 

グイド・レーニ『聖マタイと天使』

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1620ヴァチカン美術館

聖マルコ

福音書記者。

洗礼と指導をペテロから受け、ローマで福音書を記した。

 

『ライオンを見る福音書記者マルコ』

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823

聖ルカ

福音書記者。

シリア人の医者。画家としても有名。

 

マールティン・ファン・ヘームスケルク『聖母マリアを描く聖ルカ』

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1532オランダ,ハールレム,フランス・ハルス美術館

聖ヨハネ

福音書記者・十二使徒の一人。

奇跡の漁をきっかけにイエスの弟子となった。

イエスに特に目をかけられ、イエスの変容やイエスの最後の祈りなどの重要な場面に立ち会った。

磔となったイエスに逃げることなく付き添った唯一の弟子でもある。

12使徒の中で唯一殉教せず、島流し先で世界の終末を記した『ヨハネの黙示録』を書いた。

 

ドメニキーノ『福音書記者聖ヨハネ』

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1621–1629

マグダラのマリア

イエスの足に香油を塗った罪深き女、イエスを歓迎するために香油をふりかけたマルタの妹、イエスの遺体に香油を塗ろうとした女性、という3人の異なる女性がすべてマグダラのマリアだったとされる。

新約聖書にはっきりと記載されているのは、イエスの磔と埋葬、復活に立ち会ったことで、罪深き女とマルタの妹ということは、はっきりとは記載されていない。

だが、3人とも香油を持っていたため、香油という象徴のもとで3人の女性が統合された。そのため、マグダラのマリアのイメージは優雅と下品、貞節と淫ら、端然と改悛といった、正反対のイメージを複数持つ。

 

カルロ・クリヴェッリ『マグダラのマリア』

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1480-1487アムステルダム国立美術館

聖パウロ

キリスト教を迫害していたが、信仰に目覚めた人物。

イエスの死後、突然イエスの声を聞いて失明してしまう。視力が戻ると、それまでの迫害とは一転して、洗礼を受けて布教活動に身を投じる。

 

ピエトロ・ダ・コルトーナ『聖パウロの回心』

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1631

サタン

罪を犯して堕落した天使。堕天使。

人間を惑わし、罪へと誘惑して堕落させる存在。

 

ギュスターヴ・ドレ

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1861−1868ダンテ『神曲』地獄篇の挿絵

アンチキリスト

イエスが救世主であることを否定する人々。

悪魔サタンの手先であるとされ、イエスの姿に偽装して偽の予言や欺瞞に満ちた説教で人々の心を惑わせる。

最後の審判の際に苦しみを与えられ、救いは決して得られないとされる。

大天使ガブリエル

神のメッセンジャーとして、神のお告げを伝える天の使い。

神の子を宿すことをマリアに伝えたのがこの天使。

大天使ミカエル

天界の軍勢を率いて悪魔たちと戦うとされている。絵画では、そのイメージから鎧を身に付け、剣を手にし、サタンを踏みつけて描かれることが多い。

最後の審判では、天秤を持って人々の魂の重さを測るとされている。

ジャンヌ・ダルクに神の啓示を与えたのはこの天使だとされている。

 

グイド・レーニ『大天使ミカエル』

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1636ローマ,Santa Maria della Concezione

熾天使セラフィム

6枚の翼を持ち、2枚の翼で顔を、2枚の翼で足を覆い隠し、残る2枚の翼で空を飛ぶ。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『聖痕を受ける聖フランチェスコ』

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1337イタリア,アッシジ,サン・フランチェスコ大聖堂

智天使ケルビム

書物によって描写が違い、姿が多様である。

『列王記』では4枚の翼が2枚づつ上下に。

『エゼキエル書』では人・牛・ライオン・鷲の4つの顔を持ち、それぞれに4つの翼を持つ。

セラフィムと同様の姿で描かれることもある。

楽園から追放されたアダムとイブが命の木の実を食べないように見張っているのがこの天使。

悪魔

人を堕落へと誘惑し、破壊へと導くサタンの手先。

巧みに人に近づき、誘惑して人に信仰を捨てさせようとする。信仰が篤ければ誘惑を跳ね除けることができた。跳ね除けることは信仰が篤いことの証明だった。

人とは似つかない醜い容姿をしており、翼や蹄、角、尻尾などを持つ。悪魔祓いでは、黒い影のような形で取り憑いた人からでてくるところが描かれる。

 

ミケランジェロ・ブオナローティ『大アントニオスの苦悩』

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1487–1488テキサス州,キンベル美術館

魔女

悪魔を呪文や魔術によって呼び出し、使役する女。

魔女狩りと称して、多数の異端者が殺された。子どもを生贄にしたり、魔術を使って呪いをかけるなどの悪いイメージは、魔女狩りが盛んに行われるようになった中世に定着した。

 

フランシス・デ・ゴヤ『魔女の安息日』

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1797−1798マドリード,ラザロ・ガルディアーノ美術館

その他のエピソード

聖母マリアの被昇天 聖母の戴冠

マリアは死ぬ前に使徒たちに会いたいと願った。すると、天使たちが使徒を雲に乗せて運んできた。

使徒たちとの再会後にマリアは死んだ。死から3日後、天使たちによって天へと運ばれた。

天に昇った後、天上でイエスに戴冠される。イエスの横に座ることが出来る天の女王として認められた。

 

ピーテル・パウル・ルーベンス『聖母被昇天』

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1626アントウェルペン,聖母大聖堂

 

フラ・アンジェリコ『聖母の戴冠』

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1430-1435パリ,ルーブル美術館

奇跡の漁

イエスが起こした奇跡の一つ。

夜通し働いても何も取れず、網を洗っていた2人の漁師に、沖にでて網を下ろすように言った。

漁師たちがイエスの言葉に従って網を下ろし、引き上げると、船が沈みそうになるほどたくさんの魚が取れた。

イエスの奇跡を目の当たりにした4人、漁師の一人ペテロと弟のアンデレ、その場に居合わせたゼベダイの子ヤコブとヨハネはすべてを投げ出してイエスに従った。

この4人は後に12使徒となる。

 

ジェームズ・ティソ『奇跡の大漁』

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1886−1894ニューヨーク,ブルックリン美術館 

カナの婚礼

イエスが最初に起こした奇跡。

イエスと弟子たちが招かれた、ガラリヤのカナでの婚礼で振る舞いのぶどう酒がなくなってしまった。

イエスは弟子たちに、6つの水がめに水を一杯にいれて持ってくるように言った。それがそれがぶどう酒に変わった。

 

ジョット・ディ・ボンドーネ『カナでの婚礼』

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パドヴァ,スクロヴェーニ礼拝堂

嵐を鎮めるキリスト

イエスが起こした奇跡の一つ。

イエスと弟子たちが小舟に乗り向こう岸へ渡ろうとした時、突然嵐に襲われた。

イエスが風と海を叱ると、嵐が静まって大渚となった。


レンブラント・ファン・レイン『ガラリヤ湖の嵐の中のキリスト』

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1633

貢ぎの銭

イエスが起こした奇跡の一つ。

イエス一行がカペナウムに到着した時、神殿への税金を収めるように求められた。

弟子ペテロに、最初に釣り上げた魚の口に銀貨が詰まっているから、それを税金として支払うように言い、魚を釣りに行かせた。

実際に銀貨が詰まっており、それで税金を支払った。

 

マザッチョ『貢の銭』

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1425フィレンツェ,サンタ・マリア・デル・カルミネ教会

姦通の女

姦通の罪で捕らえられ、石打ちの刑に処せられようとしていた女を救い、今までに罪を犯したことのない者だけが女に石打ちをしなさいと言うと、誰も石打ちをしなかった。

「私もあなたを罪に定めない」と告げて帰らせた。

 

ギュスターヴ・ドレ『イエスと姦通の女』

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1866

サマリアの女

イエスが異教徒に布教したというエピソード。

イエス一行がガラリヤへ向かう途中、サマリア地方の町に立ち寄った。イエスが井戸のそばに座っていると、サマリア人の女が水を汲みに来たので、水を飲ませてくれと頼んだ。

サマリア人とユダヤ人は仲が悪かったため、女は驚いた。驚く女にイエスは話を続けた。イエスの話に夢中になった女はイエスこそが救世主だと気づく。

女は町の人々にイエスのことを話し、町の人はイエスを信じるようになった。

神の福音がユダヤ人世界から異邦人世界へと広がるきっかけとなった。

 

グエルチーノ『井戸端のイエスとサマリアの女』

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1640−1641マドリード,ティッセン=ボルネミッサ美術館

マタイの召命

収税所にすわっている徴税人マタイに向かって、「わたしに従ってきなさい」と言った。するとマタイは立ちあがって、イエスに従った。

 

カラヴァッジオ『聖マタイの召命』

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1599-1600ローマ,サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会

ラザロの復活

イエスが起こした奇跡の一つ。

イエスの親しい友人ラザロの死を知り、墓所を目指す。イエスが墓所に到着したとき、死後4日もたっていた。イエスが涙を流すと奇跡が起こり、全身に包帯を巻いたラザロが石棺から出てきた。

 

ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ『ラザロの復活』

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1310−1311テキサス州,キンベル美術館

マグダラのマリア

イエスが起こした奇跡の一つ。

あるパリサイ人の家で食事をしていたイエスのもとに、罪の女が香油の入った壺を持ってやってきた。その女は泣きながらイエスの足もとに寄り、涙で足をぬらし、髪の毛でぬぐい、足に接吻し、香油を塗った。

イエスはその女に向かって「あなたの罪はゆるされた」「あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」と言った。

はっきりとは記載されていないが、この罪の女はマグダラのマリアだとされている。

 

フランス・フランケン『シモンの家での食事』

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1630ワルシャワ,ヨハネ・パウロ2世美術館

盲人の治療

イエスが起こした奇跡の一つ。

イエスが盲人の目に唾を付けて両手をあてた。そうすると、盲人の目がぼんやりとみえるようになった。

もう一度両手を目に当てると、盲人ははっきりと目がみえるようになった。 

 

あとがき

新約聖書編は終わりです。新約聖書だけでも膨大な量の美術作品があると分かっていただけたと思います。そして、どれも素晴らしい作品ばかりです。

聖書のストーリーを理解すれば、さらに楽しくなることは間違いありません

前回の旧約聖書と合わせて、みなさんがキリスト教美術を楽しむ助けになれば。

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