こんにちは。YoFuです。
今回は、ビールのアレコレについて解説します。
ビールを楽しむ上で知っておくとさらに楽しむことができるんじゃないかなということを解説していきます。ビールの味のきめてや分類、種類、用語、作り方などです。
ビールの歴史は古く、文明が誕生した頃にはすでに飲まれていたとされています。文明広がりとともに世界中に広がりました。現在では世界のあらゆる地域で作られており、数え切れないほどの種類があります。
ビールの分類については、いろいろな方法が用いられています。原料や醸造方法、酵母の種類、色、熟成、アルコール度数、香り、苦味、醸造者、醸造場所など様々な括りによる分類方法があります。
細かく分類されすぎていて覚えきれませんし、何が違うのかよくわからないようなものもあります。
なので、今回はできるだけ分かりやすいように、醸造方法の違いと色の違いごとに分類していきます。細かいところは間違っているかもしれませんが、分かりやすく分類できたと思います。こんな種類のビールがあるんだなというふうに思っていただければ。
なんだかんだ言いましたが、結局、いちばん大切なのは「美味しさ」です。細かい分類などは気にせずに、いろんなビールを味わってみてください。
結局の所、ビールの分類というのは「美味しい」か「美味しくない」かの2種類です。
基本的な材料と作り方
材料
・水
・大麦(原料)
・酵母
・ホップ
作り方
1.水を温めて麦を入れます。
2.ホップを追加で入れます。
3.酵母を追加で入れ、数日ほかっておきます。
4.完成
これが基本の作り方です。
モルトの種類やロースト具合、酵母の種類や発酵時の温度、ホップの種類や効かせ具合、水の中のミネラル分の量、ハーブやスパイス、フルーツを加えてみたりなどでビールの味がかわります。
ビールの味というものはモルトや酵母、ホップ、水など様々な原料が複雑に混じり合って織りなされるハーモニーです。混ざり方が少し違えば、生み出させるハーモニーも違ってきます。ハーモニーは無限に存在しています。
分類方法
ちまたで使われている分類法はめちゃめちゃ細かく分類されています。細かすぎてよくわからないので、私が一番わかり易いと思う方法で分類します。
先ず、醸造方法の違いでエール・ラガー・自然発酵の3つに分類します。そして、エールとラガーは種類が多いので、黄金色・琥珀色・黒色の3つのタイプで括ります。分類に属さない特別なものはその他で括ります。
全部で8種類に分類しました。細かいところは違うかもしれませんが、かなり分かりやすく分類できたと思います。こんな種類のビールがあるんだなというふうに思っていただければ。
・エールビール
ビール醸造用に培養した酵母を使って、常温で発酵させるビール。
常温で醸造するので、酵母が元気になり上の方で盛んに発酵します。上の方で発酵するので上面発酵と呼ばれます。
特別な技術が必要ないので、古くから続いてきた伝統的な作り方です。長い歴史の中でいろんな種類のエールが作られてきました。
特徴として、コクがあってまろやかなのどごしです。モルトの持つ風味と、酵母が作り出すエステル香(フルーティーな香り)を存分に楽しめるビールです。
・ラガービール
ビール醸造用に培養した酵母を使って、低温で発酵させるビール。
冷たい温度で醸造するので、酵母の元気がなくなり、下の方で発酵します。下面で発酵するので、下面発酵と呼ばれます。
醸造に冷蔵技術を必要とするので、昔は、冬に天然の氷がとれて夏は涼しい洞窟があるよな、条件が揃った一部の地域でしか作られていないマイナーなビールでした。
近代に入って機械による冷蔵技術が確立されると、どこでも作れるようになりました。キンキンに冷えた爽快なのどごしの美味しさから世界中に広がりました。
メジャーになったのは近代に入ってからなので、歴史は深くありませんが、大量生産と管理が簡単にできるので、世界中で一番飲まれています。
すっきりとした爽快なのどごしが特徴です。ホップによって味が大きく左右されます。
・自然発酵ビール
自然に存在している野生酵母を使って、発酵させるビール。
厳密に言えば、酵母が発見される近代までのビールは全てこの自然発酵ビールでした。
現在も伝統的な自然発酵ビールは作られています。
エールビール
淡い黄金色のエール
淡い色のモルトや小麦などを主な原料としたエールです。
淡い黄金色を作り出すペールモルトという種類のモルトを使ったエールはペールエール(Pale ale)と呼ばれます。イギリスではイングリッシュビターと呼ぶことがあります。
小麦を使ったエールは白ビールと呼ばれます。
・ライトエール(Light ale):イギリス発祥。アルコール度数が低いため、ライトと呼ばれます。ペールエールの一種。
・ゴールデンエール(Golden ale):イギリス発祥。名前の通り透き通ったきれいな黄金色と柑橘系の爽やかでフルーティーな香りが特徴です。ペールエールの一種。
・ケルシュ(Kölsch):ドイツのケルン発祥。明るく透き通った淡黄色をしています。
ラガーと同じような低温で発酵させたエールです。ラガーのようなすっきりした味とエールもつのフルーティーな香りを併せ持っているが特徴です。
・ヴァイツェン(Weizen):ドイツ発祥の小麦を使ったビール。原料のうち、小麦を半分以上使っています。白みがかって曇った金色をしています。
強めの炭酸と、小麦がもつ甘いフルーティーな香りと調和させるためにホップの苦味が抑えられているのが特徴です。
濾過すると曇りがとれて透き通った美しい色になるので、濾過したものをクリスタルヴァイツェン(Kristall weizen)と呼び、濾過されていないものをヘーフェヴァイツェン(Hefe weizen)と呼びます。
・ヴィット(Witbier):ベルギー発祥の小麦を使ったビール。白みがかって曇った金色をしています。
ホップを使わずに、コリアンダーやオレンジピールなどでフルーティーな香り付けがされているのが特徴です。ホップの風味や苦味がないかわりに、酸味が少しあります。
・ヴァイツェンボック(Weizen bock):原料の半分近くに小麦を使用したボック(ボックは後で出てきます)。
ヴァイツェンのもつフルーティーさとボックのもつ甘みのいいとこ取りした風味と香りが特徴です。
・ベルリナーヴァイセ(Berliner weisse):原料の一部に小麦を使ったビール。
アルコール度数を低く抑え、乳酸菌を投入して酸味を強く残したものです。そのまま飲んでも美味しいですが、強い酸味と調和を取るためにフルーティーなシロップを加えたり、他のビールと混ぜたりしてカクテルのような飲み方をすることもあります。
琥珀色のエール
琥珀色や濃い茶色のモルトを使用して醸造されたエールです。
淡い色のモルトを焙煎したり、ローストすることで琥珀色や濃い茶色のモルトを作ることができます。ローストによる甘さや苦味などの独特の風味をエールにもたらすことができます。
・ブラウンエール(Brown ale):イギリスのニューカッスル・アポン・タイン発祥。イギリスで人気のあるエールです。
ブラウンモルトという、麦芽をローストしたモルトを使ったエールの総称として使われます。
モルトのロースト具合で、琥珀色から濃い茶色まで色の幅ができます。ローストしたモルトによるキャラメル、チョコレートなどの甘い香りとナッツのような味が特徴です。甘さを目立たすために、ホップの苦味や香りが抑えられています。
ブラウンエールは、当時人気のあったペールエールに対抗するために誕生しました。発祥地のニューカッスルはホップの産地から遠かったため、ホップの使用量を減らしました。このことから、ホップの苦味と香りが抑えられてローストしたモルト由来の豊かな甘い香りが特徴となりました。
・マイルド・エール(Mild ale):17世紀頃のイギリス発祥。
マイルドは元々、作りたての熟成していないビールを表すために使用されていました。特定のスタイルの名前ではなく、作りたての熟成していないビールを表す表現として使われました。マイルドエールやマイルドポーター、マイルドビターといった使われ方です。
現在はそのような意味がなくなりました。スタイルの名前となりました。
ブラウンモルトとペールモルトを混ぜて作ります。ペールモルトの量を抑えると黒に近い色になります。琥珀色から黒に近い色まで自由自在です。アルコール度数は低く抑えられ、ホップの苦味と香りが軽くつけられてます。黒に近い色ほど、ローストしたモルトの甘みが強くなります。
・オードブライン(Oud bruin):ベルギー発祥。1年もの長い間熟成させたエール。
熟成させると、芳香がより強くなり酵母とバクテリアが特徴的な酸味を作り出します。エールの持つフルーティーな芳香と、熟成過程で生じたモルトの穏やかな香りと特徴的な酸味が調和したフレーバーを作り出します。
酸味がかなり強いので、市販の際は甘いビールと混ぜて酸味を和らげることがあります。そうすることで、より複雑なフレーバーを作り出します。
・アルトビール(Alt bier):ドイツのデュッセルドルフやミュンスターで作られています。ホップの苦味は強めですが、フルーティーな香りをした黒褐色のエールです。発酵が終わったあと、低温で熟成させるのが特徴です。
・アンバーエール(Amber ale):アンバーは「琥珀」という意味で、キレイな琥珀色をしたエールのためアンバーエールと呼ばれています。琥珀色のアンバーモルトとクリスタルモルトを使用したエールの総称として使われます。
・インディアペールエール(India Pale Ale):IPAと略します。銅のような明るい琥珀色をしています。
19世紀頃、イギリスはビールをインドに輸出しました。イギリスから船で運ぶ間に腐敗するのを避けるために防腐剤としてホップを大量に追加し、アルコール度数を高めました。そのため、高いアルコール度数をもつ、ホップの香りと苦味を存分に楽しめるエールとなりました。
・スコッチエール(Scotch ale):もともとはスコットランド産のエールという意味でした。現在は、ローストしたモルトの特徴を活かした、カラメルのような非常にスイートな風味を持つ、色の濃いエールの名前として世界的に使われています。
チョコレートのような、非常に濃い茶色と甘い風味をもっています。
・デュンケルヴァイツェン(Dunkel weizen):ローストしたモルトと小麦を使ったエール。
デュンケルのもつローストしたモルトの甘い香りとヴァイツェンのもつフルーティーな香りを持つ、いいとこ取りしたエール。
フレーバーを楽しむために、ホップの苦味が抑えられています。白ビールと黒ビールを合わせているので、琥珀色をしています。
・レッドエール(Red ale):赤みがかったエールの総称。
・オールドエール(Old ale):大量のモルトを使い、1年以上熟成させたエール。熟成による鋭い酸味とモルトの芳香、高いアルコール度数が混ざりあい複雑な風味を生み出します。琥珀色からブラウン色をしています。
黒色のエール
ダークエール(Dark ale)とも呼びます。濃く焙煎した黒いモルトを使用して醸造します。
・ポーター(Porter):イギリスのロンドン発祥。ローストしたモルトの持つ甘い芳香とホップの苦さが楽しめます。モルトのロースト具合によって、琥珀色から黒色まで自由自在です。
荷物運びのポーターに人気なのでこの名が付いたと言われています。
アルコール度数の高いものは「スタウトポーター」と呼ばれていましたが、スタウトと独立したスタイルとみなされるようになりました。
・スタウト(Stout):ポーターを基に作られた、アルコール度数が高いエール。
強くローストした黒いモルトを使用するので、ほとんどのスタウトの色は黒くなります。モルトを強くローストすると苦味を引き出せるので、その苦味と甘み、香り、高いアルコール度数でハーモニーを作り出します。
誕生とともに大人気となり、様々な種類のスタウトが作られました。
日本などを含む一部の国では上面発酵でなければならないという規定はなく、ラガーであってもスタウトと呼ばれることがある。
・ドライスタウト・アイリッシュスタウト(Dry stout・Irish stout):20世紀初頭のイギリスでは甘いスタウトが人気になり、甘いスタウトが主に作られるようになりました。
逆に、アイルランドでは甘くないスタウトが人気となり、甘くないスタウトが作られるようになりました。甘いスタウトに比べると乾燥した味がするため、ドライスタウトまたはアイリッシュスタウトと呼ばれるようになりました。
現在では、ドライスタウトのほうがメジャーとなり、世界中のほとんどの人にとって、スタウトといえばドライスタウトとなりました。
軽いモルトの香りと、強くローストしたモルトのドライな苦味が後味に強く残るのが特徴です。泡持ちが良く、黒いビールと白い泡がとてもキレイなコントラストを生み出します。
・スイートスタウト(Sweet stout):20世紀頭に誕生したスタウト。ミルクを足すことで、非常に甘くしたスタウト。
スタウトがもともと持っている、ローストしたモルトの甘みと足したミルクの甘みが合わさり、チョコレートやコーヒーのような甘い芳香を作り出します。
・インペリアル スタウト(Imperial stout):アルコール度数を高くしたスタウト。帝国に輸出されたため、インペリアルと呼ばれます。ロシアに輸出されたものは、インペリアル ロシアン スタウトと呼ばれます。
ラガービール
淡い黄金色のラガー
・ペールラガー(Pale lager):19世紀半ばに広がったスタイルです。ラガーは中世から作られていましたが、低温で醸造しなければならず、天然の氷が取れるような限られた場所でしか醸造できませんでした。
近代に入って冷蔵技術が発達し、場所を選ばずに醸造できるようになると、キレイな黄金色とすっきりとした味わいが人気になり、急速に広がっていきました。
ペールラガーはピルスナーモルトを使った、淡い色のラガーの総称として使われることがあります。
非常に淡い黄金色をしています。低温でゆっくりと発酵すると、モルトに含まれている糖がほとんどアルコールへ変わり、ねばつきのないすっきりとした味わいになります。
エールのもっていた甘さやフレーバーなどの伝統的なビール成分がないので、ビール自体に風味はほとんどありません。なので、ホップの種類によって大きく表情がかわるのが特徴です。
・ピルスナー(Pilsner):チェコのピルゼン地方が発祥。 淡い黄金色をしています。
ビール自体にほとんど風味がないので、ホップの種類や効かせ方によって表情がかわります。ホップの苦味と香りを存分に楽しむことができるビールです。
大量生産と管理が容易のため、現在世界で最も流通しています。
・ヘレス(Helles):ドイツのミュンヘン発祥。ヘレスはドイツ語で「淡色」という意味です。明るい黄金色で、ピルスナーに比べるとホップの香りと苦味が抑えられており、モルトの風味が強いです。
・マイボック・ヘレスボック(Mai bock・Helles bock):ボックの淡くてホップが多いバージョンです(ボックは後で出てきます)。
ヘレスタイプの淡い黄金色のラガーにボックのアルコール度をもたせたものなので、色が薄く、ホップの存在感が強くなります。淡い色のモルトを使用しているので、従来のボックよりも淡い色になり、ホップの苦みや香りが強いです。
淡い色のモルトの使用量が少なければ、色は濃い琥珀色に近づいていき、ホップのフレーバーは弱まっていきます。
・ケラービア・ツヴィッケルビア(Kellerbier・Zwickelbier):発酵が終わったらすぐに飲む、濾過されていないラガーです。酵母などすべての物質がビールに残っているため、濾過されたビールよりも栄養価が高いです。熟成されていないので、炭酸が少なく酸味が効いたスパイシーな味が特徴です。
琥珀色のラガー
・ウインナーラガー(Wiener lager):オーストリアのウィーン発祥。Wienerはドイツ語で「ウィーンの」という意味で、ウィーンのラガーという意味の名前です。
モルトを高めの温度で乾燥させることで、淡い黄金色がかかった琥珀色と軽いローストの風味を生み出します。
すっきりとしたのどごしで、モルトの持つ軽いローストの香りと甘みとホップの持つ香りと苦味が楽しめます。
ドイツのミュンヘンに渡ってメルツェンとなりました。
・メルツェン(Märzen):ドイツのミュンヘン発祥。現在のメルツェンはウインナーラガーと似ていますが、昔のメルツェンは現在と全く違いました。
昔はオクトーバーフェストのお祝いのためのビールでした。当時は冷蔵技術が未発達であったため、4月末から9月末の夏はビールの醸造が許されていませんでした。そのため、夏は冬に醸造したビールが飲まれていました。ビールを長期間保存するために、アルコール度数を高め、防腐剤としてホップが大量に使われたビールが開発されました。
19世紀半ばにウインナーモルトでメルツェンを造ったら大人気になったため、メルツェンにはウィーンモルトが使われるようになりました。味はウインナーラガーと似ています。
・ボック(Bock):昔から作られてきた、伝統的なビールです。種類が多いため、伝統的なボックをトラディッショナルボックと呼ぶことがあります。
ドイツのアインベック発祥。Bockは「ヤギ」を意味するので、ラベルにヤギが描かれてることがあります。
ローストしたモルトを使っているので、黒に近い、かなり濃い琥珀色をしています。ホップはあまり使用されず、ローストしたモルトの持つ濃厚な甘みと香りを存分に味わえます。アルコール度数は高めです。
・ドッペルボック・ダブルボック(Doppel bock・Double bock):doppelはドイツ語で「ダブル」と言う意味です。トラディッショナルボックを強くしたビールのため、そう呼ばれます。
昔は、修道院で飲まれていたビールです。非常に栄養が豊富であったので「液体のパン」とされ、修道院が断食修行中の栄養補給としてに飲まれていました。
トラディッショナルボックの強い版なので、より濃厚な甘みと香りとより高いアルコール度数をもっています。
・アイスボック(Eisbock):ドッペルボックを凍らせてフレーバーとアルコールを凝縮させたビール。濃縮させすぎた結果、アルコール度数57%にもなるアイスボックが発売されています。
濃縮の過程で不純物が取り除かれつので、鮮やかな深い色になります。濃縮された強いフルーティーな香りとリッチな甘さ、アルコールが素晴らしいハーモニーを作り出します。
黒色のラガー
19世紀後半に技術の進歩によって黄金色のラガーの生産が容易になるまで、ほとんどのラガーは黒色でした。
・デュンケル・ドゥンケル(Dunkel・Dunkles):ドイツのミュンヘン周辺のビール。デュンケルはドイツ語で「暗い」という意味です。
デコクションマッシングという方法がとられているので、モルトの豊かな香りが特徴です。モルトの香りが強いので、ホップの苦味や香りが抑えられています。
・シュヴァルツビール(Schwarz bier):Schwarzはドイツ語で黒という意味です。黒ビールという意味の名前です。ドイツでは、黒ビールの総称として使われることがあります。
ローストしたモルトを使用しているので黒い色をしたビールとなります。ローストしたモルトの持つ香ばしさと苦味、甘みがあります。
自然発酵ビール
・ランビック(Lambic):ベルギーのパヨッテンランドで醸造されるビールのことです。ここで作られるもの以外はランビックとは呼びません。
醸造用酵母を使って発酵させるエールやラガーの製法と異なり、天然の野生酵母をつかった自然発酵で作られます。自然発酵により、独特のフレーバーや酸味が生み出されます。
そのままだと、独特の酸味がかなりあるので、市場に出回るときは何かとブレンドすることが多いです。
・バーレイワイン(Barley Wine):イギリス発祥。イギリスは気候の関係でブドウが生育たずワインが生産できなかったため、ワイン並みにアルコール度数が高くて長期熟成が行えるお酒を作ろうとして開発されたとされています。大麦(Barley)で作ったワインのようなものなので、バーレイワインと呼ばれています。
大麦を使って熟成させた、アルコール度数の高いエールの総称として使われます。
使用するモルトの種類や熟成期間によって、様々な香りや風味が生まれます。
長期熟成させることで、まろやかな風味になり、濃厚で複雑な芳香を楽しむことができます。
原料に小麦を使っている場合、ウィートワイン(Wheat wine)と呼ばれます。
・フランダース レッド エール(Flanders red ale):オーク樽を使って、1年以上もの間長期熟成させるビール。赤い色をした特別なモルトを使用するため、深紅色のビールとなります。
熟成によってフルーティーな香りと甘い香り、強い酸味が生み出されるのが特徴です。
・ライ麦ビール(Rye beer):ライ麦を原料の一部に使ったビール。ライ麦を使うと、スパイシーでドライな風味がビールに加わります。
特に特徴的なのが、ドイツのバイエルン発祥のロゲンビール(Roggenbier)です。これは原料の半分以上にライ麦を使ったビールです。ライ麦の持つ、スパイシーでドライという特徴が際立っています。
・バナナビール(Banana beer):つぶしたバナナを発酵させて作った伝統的な酒です。儀式や式典、お祭りで使うことがある、文化そのもののお酒です。
ケニアやウガンダ周辺の東アフリカで作られています。ソルガムやキビ、トウモロコシなどの穀物についている野生酵母を使うため、発酵直前に投入されます。
・ラオホビア(Rauchbier):ドイツのバンベルクで伝統的に作られてきたビールです。ラオホ(rauch)はドイツ語で「煙」の意味であり、燻製したモルトを使っているので、ラオホビアと呼ばれます。燻製によるスモーキーな風味が最大の特徴です。
・アイスラガー(Ice lager):ラガーを凍結させてアルコール分を凝縮させたものです。
・トラピストビール(Trappist beer):トラピスト修道院で作られているビールのことです。ビールスタイルの名前ではありません。
伝統を守るために、許可された修道院しかトラピストビールを名乗ることができず、現在は12箇所の修道院しか許可されていません。
色や味、製法などはそれぞれの修道院独自であり、共通点はほとんどありません。濃色でアルコール度数が高いエールタイプが多いです。
修道院の作るビールなので、飲む際は聖杯型の専用グラスが使われます。
・アビイビール(Abbey beer) :別名は修道院ビール。かつてのビールは栄養が豊富だったので、色々な修道院でビールの醸造が行われていました。かつての作り方を元に醸造されているビールの総称です。
ビールスタイルの名前ではないので、それぞれのビールに共通点はほとんどありません。
・フルーツビール(Fruit beer):名前の通り、フルーツを加えたビール。フルーティーな香りと甘さを楽しむことができます。さくらんぼ、ラズベリー、桃、カシス、ぶどう、苺、りんご、バナナ、パイナップル、杏子、梅、レモン、パッションフルーツ、ブルーベリー、フルーツシロップなど使用されるフルーツはバラエティに富んでいます。
醸造の途中でフルーツやシロップを入れて、モルトと一緒に発酵させて作ります。
ランビックにフルーツやシロップを入れた場合は、フルーツ・ランビックと呼ばれます。フルーツ・ランビックの場合、ランビック特有の酸味とフルーティーな甘さが調和して、絶妙な美味しさを作り出します。クリークと呼ばれる、かなり酸味のあるさくらんぼを加えた場合は、クリーク・ランビック(Kriek lambic)と呼ばれます。かなりの酸味があります。
近年は手間のかからない、瓶詰め直前にフルーツシロップや果汁、人工甘味料を加えたカクテルに近いものが増えています。このように、適当に風味付けされたものはあくまでもカクテルであり、フルーツビールではありません。
用語
・モルト(麦芽):麦の種子を発芽させたもの。ビールの色と味を決める要です。淡い色のモルトを使うと淡い黄金色のビールになり、ローストしたモルトを使うと色の濃いビールになります。
ローストすると淡い琥珀色から真っ黒まで幅広い色と甘さと苦味、香ばしさを持たせることもできます。これたは、ロースト具合によって自在に調節できます。
・マッシング(糖化):モルトに含まれている糖(でんぷん)を分解することです。
モルトに含まれている糖はそのままだと発酵に使えないので、お湯にモルトを入れて加熱し、モルトの持つ酵素に、糖を発酵に使えるように分解させます。
マッシングのやり方は2種類あります。
1つ目はインフュージョンマッシング。原料に使うモルトを一度にまとめて加熱する方法。簡単な方法なので、市場に出ている商品のほとんどはこの方法です。
2つ目はデコクションマッシング。先にある程度のモルトだけ沸騰させておいて、残りのモルトと混ぜて加熱する方法。沸騰させると、モルトからより多くの糖(でんぷん)がでるので、完成したときにモルトの香りが豊かになります。手間のかかる方法なので、伝統的なビールを醸造するときぐらいにしか用いられない方法です。
・水:ビールの全成分の9割を占めており、地味ですがビールの味を左右する重要なものです。ミネラルが多いほどコクが出るので、エールには硬水が、ラガーには軟水が使われます。
・IBU:ビールの苦味の単位です。数字が大きいほど苦くなります。
・SRM:ビールの色の単位です。数字が大きくなるにつれて、淡い黄金色〜琥珀色〜黒色と濃く不透明になっていきます。
・エステル香:ビールの持つフルーティーな香りのことです。ラガーではほとんど香りません。エールではすごく香ります。
・ホップ:ビールの風味づけに使われます。苦味や爽やかな香りをビールもたらします。モルトのもつ甘さや苦味などの風味とバランスを取る役割があります。ビールの味を整える、ビールの要となるものです。
昔は、防腐剤としても使われていました。
ホップのかわりにハーブやスパイスなどを使うこともあります。
・ビアグラス:ビールを飲むときに用いられるグラスです。様々な形状、材質のグラスがあります。形状や材質によって香りや色などをより際立たせることができます。ビールの風味によって使い分けられます。
あとがき
いかがでしたでしょうか。色々なビールがあることが分かっていただけたと思います。
今回解説で用いた分類方法は、あくまでも私の分類方法です。こんな種類があるんだと思っていただければ。
長ったらしく解説してきましたが、ここで解説していないビールは世界中にたくさんあります。世界中で、様々な珍しいビールと出会ってみてください。ビールとの出会いは一期一会です。
ぜひ、自分の舌で「美味しい」か「美味しくないか」分類をしてみてください。